もしも 一度だけ
身体を捨て 心を捨てて
貴方の 未来へ
飛んでゆけるとしたら
もしも 一度きり
記憶を捨て あの日を捨てて
貴方と どこかで
すれ違えるとしたら
会いに行くよ 透明になって
白む空へ 祈りひとつ持って
私よりも 幸せでいて
飛んで行くよ 透明なままで
想い出も 愛情さえも超えて
いつよりも 豊かに生きて
もしも 一度だけ
今を捨てて 浅い眠りに
貴方に ひとこと
伝えられるとしたら
会いに行くよ 透明になって
笑顔纏い あの日の姿で
貴方より 貴方らしくいて。
Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私
もしも 一度だけ
身体を捨て 心を捨てて
貴方の 未来へ
飛んでゆけるとしたら
もしも 一度きり
記憶を捨て あの日を捨てて
貴方と どこかで
すれ違えるとしたら
会いに行くよ 透明になって
白む空へ 祈りひとつ持って
私よりも 幸せでいて
飛んで行くよ 透明なままで
想い出も 愛情さえも超えて
いつよりも 豊かに生きて
もしも 一度だけ
今を捨てて 浅い眠りに
貴方に ひとこと
伝えられるとしたら
会いに行くよ 透明になって
笑顔纏い あの日の姿で
貴方より 貴方らしくいて。
目が覚めると
書きかけの
文章を映した液晶が
腕の下に
転がっていた
たとえばそんな風に
僕の一日は始まる
夜、眠りに就くとき
明日起きることを
楽しみにしているひとは
幸せである、と
何かで読んだことがある
僕は
明日を怖れる
とまではいかなくても
幸せを見つけることが
いまひとつ下手で
明日を楽しみに眠る
なんていうことは
到底できない
幸せというものは
存在するものではなくて
そこにあるものを
自分が
幸せと感じられるか
ただ、それだけのこと
生きるということは
本当に、難しい。
過去に
僕の元を去っていった
人たちの言葉を
思い出していた
自分は自分の道を
進むのだと言った人
あなたには
付き合いきれないと
愛想を尽かした人
現実的な同機だったり
ただの喧嘩だったり
それは
どれを取ってみても
言い訳にも聞こえるし
最もらしくも聞こえる
そんな言葉だった
ただ、ひとつ
敢然と成されたこと
それは
僕のことを
「もう必要ではない」 という
はっきりとした宣告
いつの間にか僕は
何かしら
自分が生きている
ということが
多くの人々にとって
とても迷惑なことなんだと
深みにはまる癖がつき
卑屈さを増していく
誰も彼も
一度近づいてきては
波のように
根こそぎ何もかも
持ち去ってしまう
こんな感覚ほど
人を浅ましくするものは
ないんだろうな
白旗でも
立てておこうか。
目が覚めると
喉がひどく痛み
やけに息苦しい
ひどい鼻づまりに、痰
またしても風邪だ
どこかに
抗生物質が五日分
落ちていないかと
何もない部屋を
ぼんやり見ていたら
ゆらり、目が覚めた
精神科、内科
消化器科、皮膚科
余りに余ったクスリが
こんなにも部屋に
積まれているのに
肝心の抗生物質が
本当に
たったの一錠も
見つからないなんて
心機一転
外の風を切って
少しバイクを飛ばし
期間限定の
ファーストフードを
上の空で食べる
通院は来週
それまでなんとか
持ってくれたらいい
熱はなさそうだし
起きたら少し楽だし
たくさんの言い訳が
景色と一緒に
流れては消えた
夜の部屋
今日もまた
何か大事なことを
ごまかしてしまった
そんな気がした。
静かに
液晶を睨む左耳に
甥っ子の泣き声と
何かを主張する声が
響いてくる
彼の涙は
たとえば僕のような
生活に疲れ
失意に呑まれた
オトナの涙ではない
何かが叶おうと
叶うまいと
ただ、自分の願いを
がむしゃらに掴み取るため
「生きるため」 に
流している涙なのだ
彼と同じ歳から
数えて三十年
人間として
いかに生きることを
無駄にしてきただろうと
苦笑しては
みたものの
前に進むための
大切な何かを
僕はどこかで
見失ったらしい
とりあえず、今は
彼が何かを勝ち取って
あるいは何かに納得して
早く眠れるといいな、と
思った
小さなカラダに
この夏は応えるだろう
子供から学ぶものは
本当に多いな。
連休ごとに
帰省してくる
弟夫婦と甥っ子が
今年も帰ってきた
会うたびごとに
できなかったことが
どんどん
できるようになる甥は
舌っ足らずながら
もう会話もできるし
飲食店のうどんを
フォークで掬って
神妙な顔をしながら
ずるずると食べている
冬がくれば
彼は、三歳になる
あっという間に
小生意気な
中学生くらいになり
あっという間に
下手な
遠慮などしながら
お酒を注いでくれる歳に
なってしまうのだろう
見違えるように
社会人としても
父親としても
立派に変身した
弟を、見てきた
今度は甥っ子が
弟を超えていく番だ
僕は
誰が行き過ぎても
笑いながら手を振る
傍観者にすぎない
それでも
甥っ子と遊ぶ時間は
僕を
少年に戻してくれた
時間よ、巡れ
セカイよ、変われと
少し投げやりに思う
そして
その中にいつでも
幸せを見つけられる
自分であれ、と。
今日も
日射しを避けながら
近所のフードコートへ
昼食をとりに行った
何を食べようかと
さんざん迷い
ある飲食店の
立て看板に
書かれたメニューを
睨んでいたら
突然、僕の前に
小学校低学年くらいの
帽子を
逆さまにかぶった少年が
おどけて、変な顔をして
飛び出してきた
僕は、思わず笑い
しばらく少年と目を合わせ
少年が引っ込んだ隙に
また、メニューを睨んだ
数十秒くらい
少年は
何か思案していたけれど
またしても
飛び出してきた
僕は
二度目は意図的に
笑う素振りを隠してみた
すると
なんと彼は
別の振り付けを考え出し
その、へんてこなポーズで
僕の視界に飛び込んできた
完全に僕は負けて
大いに笑ってしまった
彼も笑っていた
そうしているうちに
改めて感じた
人間は本能的に
「他者を喜ばせたがる」
生き物なのだと
彼がくれた笑いは
食事が済んでしまうまで
僕のカラダに
ずっと響いていた。
目を覚ました深夜
真っ暗な部屋で
1.5リットルの
ペットボトルを抱えて
ベッドに腰を下ろした
「一日が始まる」 という
実感が掴めない
そんな気持ちだけが
静まり返った部屋に
ゆっくりと放たれては
消えていった
カーテン越しの窓が
朝の光で明るくなり
玄関のドアの音が
慌ただしく聞こえて
否応なしに
今日が走り出す
僕は
仰向けになって
脚を組んだまま
じわり、じわりと
忍び寄ってくる今日を
どうやり過ごすか
そればかりを考えていた
時計の針は速い
人のこころも。
泥のように眠り
目を覚ました夏の夜は
地球上にたったひとり
呼吸しているような気がして
平和な孤独を持て余す
居場所があるような
無いような暮らしのなかで
自分の生きてきた道は
間違ってはいなかったかと
ただ、それだけを
繰り返し心に問うとき
目の前に開ける景色は
美しく、とても美しく
けれど
すべてがモノクロームで
無機質にこの世界の
本質をさらけ出しながら
鈍く光を放っている
大切なのは
生きていることではなく
生きること
この一瞬を賭して
つまならい未来の幾年分を
色彩豊かな今に変えて
輝かせてみせること
少なくともそれは
目の前の死んだセカイより
ずっと人間的で
刹那的で、情緒的で
僕らしいものに違いない
訳もわからず
涙が溢れる寝起きに
思うのは
たとえば、そんなこと。
コップに入った水を
ひと思いに、飲む
「ああ、そうか」 と
何が分かった訳でもなく
秘かに、呟く
昨日、今日と
幾分涼しい時間が
僕の周りに
それでも
絡みついていた
夜になったら
そればかりを思い
安いゲームに耽り
いよいよ
眩暈がするほどに遊んで
迎えた夜には
やることも無く
モニタの細部まで
色の無い目で
ちらちらと見て回って
何を納得したのか
一段落したような気がして
水を飲み干した
おそらく、そんなところ
そして僕は
ついに気付いてしまう
生活者としての僕を
怜悧な目で眺める
傍観者としての僕に
だから喉が渇く
ああ、そうか。