椅子に座ったまま
目を瞑り
大阪の人だかりを
脳裏に歩いていた
そして
その中の誰一人として
同じではないのだと
ごく、当たり前のことに
ひどく驚いて
目を開けた
もしも、今の僕が
昔と変わってしまったなら
いま出会う人は
変貌した僕の姿しか
見ることはできない
「僕が変わっていない」
ということを
証明するための
「何か」 が欲しいと
強く、思った。
Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私
椅子に座ったまま
目を瞑り
大阪の人だかりを
脳裏に歩いていた
そして
その中の誰一人として
同じではないのだと
ごく、当たり前のことに
ひどく驚いて
目を開けた
もしも、今の僕が
昔と変わってしまったなら
いま出会う人は
変貌した僕の姿しか
見ることはできない
「僕が変わっていない」
ということを
証明するための
「何か」 が欲しいと
強く、思った。
眠剤を飲んで
横になっていたけれど
いつもの如く
あまりの効果の無さに
横になっているのも
だんだんと苦痛になって
いよいよ
居たたまれなくなって
勢いよく起き出し
カップ麺を
手当たり次第にふたつ
ペットボトル 2本
一気に空にしたところで
生きた心地がした
話し相手を探すにも
既に深夜、3時
僕は椅子に座ったまま
何とはなしに
好きな言葉を二三、呟く
そしてまた視線を
汚いスープへと移す
こんなものを食べたのか
と、少し自己嫌悪する
けれど、頭で思うほど
不本意なことをしたとも
特に思えない
要するに、どうでもいいのだ
僕が安定していたのは
恋人と呼べる誰かが
存在した期間だけ
関わるべき誰かのことを
優先順位を明確にして
考えていられた
比較的
恵まれた季節だけ
一人に戻れば
相も変わらず
今も昔も同じことを
繰り返している
こんな塩辛いスープ
誰が飲むんだろう
こんな不健康な夜食
何年続けているんだろう
「切ない」 とか
「侘びしい」 というのは
こんな気持ちの
ことなんだろうな。
夕方の
ファーストフードで
空になったコーラの
ストローをすすりながら
思った
人生というものは
曲がりくねっているのが
本来の姿であって
真っ直ぐに生きようと
努力することは
美徳では
あるかもしれないけれど
真実とは言えない
それを知った上で
なお、真っ直ぐに
強引な程に
前へ前へ進もうとする
僕のような人間は
自分の
進んでいる方向に
つまり
自分自身に対する
信用を無くした瞬間
粉々に
砕け散ってしまうのでは
ないだろうか
生き方に
正しいも間違いも無い
なんていうのは
社交辞令であり
ただの詭弁であって
こう生きるのが
ベストだ、といえる姿勢が
きっとあるはず
倫理観なんて
もう、ウンザリだ。
この世界に存在する
「僕」 という人間は
僕を見ている
人の数だけ存在すると
当たり前のことに
改めて気付く月曜日
自分自身でさえ
世界とのズレを
常々、感じるのだから
僕と接する人々にとって
僕はおよそ
珍獣のようなものだろう
そんなことを
ぼんやりと考えつつ
昔、詠んだ歌を
ひとつ、ふたつ
引っ張り出して
声にしてみた
客観視することは
それほど下手でもない
これからは
客観視される練習も
した方がいいだろうか
どちらも同じことか。
お気に入りの邦画
「恋空」 のDVDを
一人、恍惚と観て
今日は涙に暮れた
主人公のヒロは
恋人との間に宿った命を
流産で亡くし
その恋人の人生を
幸せに導きたい一心から
敢えて嫌われ役を演じ
彼女を遠ざけ
晩年、再会を果たし
事実と想いを告白するも
ガンとの過酷な闘病の末
朦朧とする意識の中で
恋人に
「笑って」 と
最後の言葉を投げかけ
その涙目の笑顔を見届けて
帰らぬ人となる
僕がこの作品に
痛く共感を覚えるのは
主人公のヒロが
親子三人
水入らずの生活を
何よりも望んでいながらも
襲いかかる病苦に
抗う術もなく
「死にたくない」 と
恋人にだけは
泣きながら本音を告げ
社会からも
生物学的にも
封殺されていく姿に
あまりにも自分の姿が重なり
共感するからだろう
明るく振る舞えば
振る舞うほどに
滅びの姿が浮き出てくる
だから
意図的に人を遠ざける
セカイにも人にも
僕は、もう
興味はないのだから。
このところ
平日であろうと
休日であろうと
朝食であろうと
夕食であろうと
一心不乱に
コンビニの
冷やし中華を
食べている
どうやら僕には
冷やし中華のことを
冷麺と呼ぶ癖が
あるようで
その癖を友人に
優しく質されたりしつつ
相も変わらず
飽きずに
食べ続けている
今日は土曜日
醤油と胡麻で二食
明日も同じものを
買ってきてもらう予定
寿司と麺と
ハンバーガーで
案外
体重も減らない
と思ったら
夜食を
計算に入れるのを
忘れていた
深夜なら食べられる
いくらでも食べられる
どうしてだろう。
昨日の深夜
地震があったらしく
真っ暗な部屋に
明々と光る
モニタを前にした僕を
随分と長く揺らした
震災以来
テレビに映された
家族を捜す人々とは
また少し違う
カタチのあるものや
無いものを
ゆっくりと失いながら
僕も相変わらず
生き残っていて
哀しみは
あの、3月11日に
突然、どこかから
湧いて出たような
そんな大袈裟な
ものではないのだと
曖昧に苦笑する
哀しみなら
いつだって目の前にある
喜ぶ人の背中には
哀しみが
出逢う人の影には
別れが見え隠れしていて
そんなことは
子供の頃から
重々承知だった
僕を 「人嫌い」 と
評価した人たちは
おそらく
僕の背中に付いてくる
僕自身の
哀しみの影を
見てしまったのだろう。
今日は
通りを行き交う
車の数が少ない
静かに自室にいて
耳を欹てていると
そんなことを思う
何のことはない
長閑な暖かい午後
そんな空気とは
およそ不似合いな
飲み散らかした
ペットボトルの容器が
机の端から
じわりじわりと
攻め寄せてくる
夕食は
何を食べようか、と
大して選択肢も無いのに
真剣に悩んでは
どうでもよくなって
体を背もたれに預け
机上のモニタを眺める
こんな日こそ
雨が欲しいのに
そう思った途端
幼児たちの声が聞こえた
雨が降らなくて
良かった。
汁だけになった
カップ麺の容器から
人工的な
豚骨スープに似せた
湯気が上がった
夜、22時
油から離れて
何層にも分離してゆく
その
ニオイのする液体を
割り箸で
ゆっくりとかき混ぜ
僕は、ほっとする
なぜなら
この器の中のものは
混ざっていなければ
意味を成さないからで
きっと
人間関係においても
ほどよく中和され
念入りに
かき混ぜられてこそ
その実体を感じられる
そんな 「何か」 が
目に見えず存在するのだと
ふと、思う
差しあたり、僕は
表面に分離している油
といったところだろうか
いつもより
少しだけ鼓動が速い
週末が、近い。
他人の性格や
身の回りの出来事すべてにおいて
人は、往々にして
その悪い点ばかりに目を向ける
だが
美点を精細に拾って
見ることのできる目を持たない限り
人生から不満と争いと
悲しみが絶えることはない。