Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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ふりゆくもの

日々
疎外感と異様な高揚感を

持て余しながら

眺める湿度の高い夜は
「独り」が突き刺さる

この部屋で、この街で
この国のどこかで

何人もの人に認められ
信頼され、愛されてきた

そのすべてを

ことごとく裏切り
失望感と憤慨だけを残し

ひとり卑屈に隠れている
そんな心持ちになる

街中が
バレンタインで賑わう中

何ひとつ
可笑しくない振りをする僕は

そろそろ、晩年に
差し掛かったのかもしれない

被害妄想、誰かの善意
表層的な繋がり、計算された嘘

焼きが回ってしまった僕に
それを捌き切る精神力は

もう、残っていない

窓の外に耳を傾ける僕には
秒針の音だけが聴こえた。

すれ違い

男性が論理を中心に行動を決定し、
女性は共感を中心に人間関係を構築する。

それ自体は、どちらも優れた人間の性質でしかない。

その優れたもの同士がすれ違うのは、
異性本来の性質を理解せずに付き合おうとしているからか、

あるいは一時的に忘れてしまっているからだ。

当たり前の部屋

鍵を回して
扉を開けると

すっきり見慣れた
真っ黒な空間が佇む

「ただいま」

僕は、念を押すように
もう一度

小さな声で
「ただいま」 と呟いた

孤独の本質が
どのようなものかと

考えることに疲れ

最近はただ
淋しさと侘びしさを

眺めるだけの
日々になってしまった

冬の空は低く
時折、小雨や雪も降る

心を温めるための
ありとあらゆる要素が

欠落したままに

物質的に安定した
今の生活は

決して不幸ではない

けれど
幸せとも呼べない

僕は、一息ついて
靴を脱ぐと

部屋の明かりをつけた

そうやって
見渡した部屋は

雑然としていて

どこから見ても
見慣れた

当たり前の部屋だった。

彼の歩いた道

22度もある室内が
今日は肌寒い

襟下あたりで切った髪を

また、背中あたりまで
伸ばそうと決め

体重計に乗っては
あと何キロ痩せようと思い

深夜は相変わらずの過食

自己嫌悪にまみれる午後は
憂鬱に埋もれる

何をする気にもならず

何もしなければ
それはそれで、また苦痛で

散歩をしてみては
という友人の提案に

「寒い」 とだけ答え

腹の底では
外を歩くのが怖いのだ

楽しそうに
過ごしている人を見ることで

その空気の外へと
追い出されてしまい

自分が何のために
その路上に存在するのか

そんな

疎外感を味わうのが
恐ろしいだけなのだ

最近は
寝ても覚めても

太宰治、一辺倒

彼が歩いた道を
いま、僕は辿っている

とさえ、思う。

浮気の原点

浮気する方より浮気される方が悪いとは言わない。

浮気という行為自体が、倫理的に好ましくないことも
確かかもしれない。

だが、浮気される方に問題があるのは明らかだ。

相手が浮気に走るタイプの人間かどうか、
その性質を見極める目が無いのだから。

雪解けの道

冬の朝 染まる息
雪解けの道 足音ふたつ

寒いねと 探る眼差し
寒くないよと 笑う私

こうして二人 当たり前に
並んで 歩く道は

心いっぱい 温かくなる

切ない 気持ちのかけらを
ゆっくり 解かすように

冬の朝 晴れた空
駅までの道 繋いだ右手

寒いねと 繰り返す声
寒くないよと 拗ねる私

少し 泣きそうになる私
ねえ、温かいよ。

約束された目標

藪から棒に

ダイエットを
しようかと思った

年末年始からの
食生活の乱れに加え

連日連夜の過食

増える一方の数字に
正直、辟易していた

いい機会かも知れない

痩せるとただ言っても
痩せられる人は少ない

あれこれと
熱心に手段を検討して

それなりに頑張り
途中で投げてしまう

そんなところだろう

それならば
特別なことは何もせず

まずは脂物や
ファーストフードを

当面のあいだ我慢して

魚介類や野菜と
サプリを組み合わせて

軽めで済ませる習慣を
付けてみようか、と

神妙に考えてみた

標準体重は遙か先

少しでも減ったならば
途中で飽きてしまっても

失うものは、無い。

「僕」の証明

何か、書こう
そう思った

けれど

何を書いていいか
悩んでしまった

頭が回らないときは
いつも同じ

淡々と過ぎゆく
今日という一日を

淡々と叙述しても

無味乾燥な
ただの記録になる

そんな
言い訳めいた理由で

記事を一日
また一日、さらに一日と

伸ばしていく

自分のブログだから
気楽にやればいい

優しい友達は
そう言ってくれるけれど

ここは、最後の砦

現実を追われた僕は
書き続けなければ

消えてしまう

そう書いた文章を
ちらりと目で読み返し

思わず、息を呑んだ。

鳴り続ける音

夜通しリピートで

鳴りっぱなしの音に
眠りを遮られ

目を覚ます

枕元に
クスリのシート

机にも
シートの切れ端

飲みかけの

ペットボトルの水の
透明さが

薄明かりに哀しくて
どうにもやるせなくて

暗い部屋の中で

右に寝返りを打ったり
左を向いたり

枕元のゲームを
やおら手に取ってみて

すぐに飽きてみたり
とにかく行き場が無い

大きな欠伸、ひとつ

カーテンを少し開けて
外の様子を窺う

いつもと同じ景色は
雨に染まっている

ああ

意味も無く
ひとしきり落胆して

シャカシャカと
鳴り続けている

音に興味を惹かれ

ヘッドホンを
耳に押し込んだ

このまま、このまま

きっと僕は
まだ生きていける。

休日の朝

玄関のドアの音に
目を覚まし

半分寝呆けたまま
部屋を眺める

昨夜

コンビニで買い込み
食い散らかした弁当の

残り物を見て
死にたいと、思う

気晴らしに
歌を聴いてみれば

別れた恋人たちの
今のしあわせが気掛かりで

ぼんやり天井を眺め
少しだけ、寂しくなる

布団に潜り
寝直す振りをしても

出るのは、溜息

どうして僕は
こんなになっているんだろう

どうして僕は
誰の人生とも合流できず

根無し草のように

ひとり
空回りしているんだろう

涙が、滲んだ

何の変哲もない
土曜日の朝なのに

こんなに温かい
布団の中なのに。