鍵を回して
扉を開けると
すっきり見慣れた
真っ黒な空間が佇む
「ただいま」
僕は、念を押すように
もう一度
小さな声で
「ただいま」 と呟いた
孤独の本質が
どのようなものかと
考えることに疲れ
最近はただ
淋しさと侘びしさを
眺めるだけの
日々になってしまった
冬の空は低く
時折、小雨や雪も降る
心を温めるための
ありとあらゆる要素が
欠落したままに
物質的に安定した
今の生活は
決して不幸ではない
けれど
幸せとも呼べない
僕は、一息ついて
靴を脱ぐと
部屋の明かりをつけた
そうやって
見渡した部屋は
雑然としていて
どこから見ても
見慣れた
当たり前の部屋だった。