エアコンを止めて
抗生物質とビタミン剤と
サプリ一式を口に放り込み
着替えて寝支度をする
こんな時間でなければ
普通のことなんだろうけど
これから一日が始まる
ちょうどその境目で
スイッチを切り
眠ってしまう僕は
社会的に見ても
動物として見ても
やっぱり
おかしいのだろう
人の目や言葉を
いちいち気にするほど
可愛い性格でもないけれど
眠る動機が
クスリの吸収率を高めるため
だなんて
眠いからでもなく
疲れたからでもなく
この不純な動機
やっぱり病んでる。
Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私
エアコンを止めて
抗生物質とビタミン剤と
サプリ一式を口に放り込み
着替えて寝支度をする
こんな時間でなければ
普通のことなんだろうけど
これから一日が始まる
ちょうどその境目で
スイッチを切り
眠ってしまう僕は
社会的に見ても
動物として見ても
やっぱり
おかしいのだろう
人の目や言葉を
いちいち気にするほど
可愛い性格でもないけれど
眠る動機が
クスリの吸収率を高めるため
だなんて
眠いからでもなく
疲れたからでもなく
この不純な動機
やっぱり病んでる。
午前三時半
カラダから
じんわりと意識が流れ出す
それは
僕の心の毒を
吸いに吸って濁りきった
汚水のようで
ゆっくりと
この美しい星を
汚染している
何が起こったのか
何を食べたのか
そして何を思い
何を考えて何に感動したのか
人間不信と
自分への疑惑にまみれた
毎日の中
僕が生きたという証明は
自分の記憶しか無いというのに
薄い砂糖水のように
記憶もまた薄まるばかり
愛情が欲しいと
強く思う
偽善の押し売りや
自己満足ではない
まっさらな愛情が
真っ暗な
部屋の中にいるのに
白く見えるはずもない壁を
白いと錯覚している僕は
何を信じれば
安心できるのだろう。
十月になった
月の変わり目を
告げるような雨が
昨日は一日中
降り続いていた
もうすぐ、冬が来る
気温が下がるにつれ
家族全員で
母のために闘った
15日間を思い出す
病院からの緊急連絡
霜が降りる寒さの中
連日早朝に目覚ましで起きて
病院に向かい
母の世話を焼いたり
ベッドの傍に座って
過ごした二週間
そして
容態急変の知らせと
駆けつけた時
すでに命を失っていた母
訳も分からないまま
葬儀屋さんの言う通りに
納棺を済ませたり
諸連絡や、葬儀に
参席して下さった方への応対
そして母の火葬
大好きな冬は
別れの季節でもある
僕にとって
僕の愛した人にとって
「去る者は追わず」
なんて言っているけれど
追うことなどできない
逃れようのない別れもあるのだと
僕は思い知らされた
あと数ヶ月で
一年が巡る
また、何も持たずに
生きながらえた
本当に月日は早かった。
僕たちは
ひとりひとりが欠片で
運命の人と出会って
初めて一人の人間になる
そんなことを言う人がいる
「一人の人間」 なんかに
なってしまったら
それを
真っ二つに引き裂くような
別れ際の苦しみは
どれほどだろう
人は生まれたときから
誰もが 「死」 に向かって
歩き続けている
どちらかが死ぬまで
添い遂げたとしても
いつか別れの時は
静かに訪れる
別々の人間同士の別れさえ
胸を引き裂くほどの
痛みを伴うのだから
僕は、自分を欠片だなんて
思いたくないし
他人を
ひとつの欠片だなんて
到底、思えない
「気がつけばいつもそこに居る」
そんな関係がいいと思う
水のように、空気のように
意識しなくても
相手がそこに居るんだと
強く感じる気持ち
それを持ち続けていたい。
とりとめのない空虚感が
じんわりと
エアコンから漏れている
僕のいちばん苦手な時間帯は
通り過ぎた
今夜はクスリを飲んでも
眠れる気がしなくて
ブックマークをしては
溜まっていく一方の読みものを
漫然と消化していた
秒針の音はゆっくり響き
じっくりと聴けば
加速しているようにも聞こえる
光らない携帯
生温く部屋と同化した
ペットボトルの水
大切なものが何かを分からずに
「何か」 を大切にしたがっている僕
こうして
ゆっくりすれ違い離れていく
惑星と僕の距離。
にわかに秋めいた朝が
早く見たい。
人間関係は
自分のキャパシティを超えて
大きくなってはいけない
ふと、そんなことを思った
関係を広げているつもりの
自分が、逆に
世界から浸食されている
息が詰まりそうになって
あるいは
詰まってしまってから
初めて 「しまった」 と思う
僕は困り果てる
中学生くらいなら
廊下を 100mも走れば
自分の知る
ほとんど全ての人と
直接
やりとりをすることができた
けれど、大人になった今
僕の 「リアル」 は失われ
ネットワーク越しに文字で話し
携帯のボタンを押す指先に
どんなに
気持ちを込めようとも
「自分側」 と 「相手側」 の
温度差は埋まらない
だから
手の届かない範囲まで
流れてはいけないと思う
世界があると知っていることと
世界を体験することが
別物であるように。
僕はかなりの近眼に
乱視もあるのだけれど
かなりの頻度で、意図的に
裸眼で街を歩くことがある
人混みや、駅の改札
バーの中や繁華街
この世界にあるものの中には
多少
ぼやけて見えているくらいが
ちょうどいいものも多い
反対に
はっきりと見えてしまうと
僕は興味を失う
見えることは、素晴らしいことだ
けれど、見えすぎてはいけない
その場所の、そのものの
その人の 「空気」を
感じる能力が
鈍ってしまうから。
静かな雑音の中で
失ったものと
手にいれたいものを比べる
失ったものは、何もかも
全てが大切なものだった
けれど
手に入れたいものは見あたらず
もしあったとしても
大切には思えない気がする
そうやって
いろいろな人や
ものを追いかけてみると
過去が常に
現在よりも輝いて見えるものだ
という言葉も
ただの言葉遊びではなくなる
「今」 を生きられるひとは
幸せだ
僕はこうして息をしながら
何ひとつ
自分の生きた証を
残すことができずにいる
だから
「時間など止まればいい」 と思うし
こんなにも
張り詰めた静寂の中に
耳が痛くなるほどの
雑音を聞いているのだと思う
僕が本当に欲しいものは
何だろう。
「寂しい」 と思いながら
コーヒーを口に運び
溜め息をついた
僕の寂しがり屋は
今に始まったことではない
生まれてから今まで
誰といても
寂しさを拭えたことなど
なかったように思う
それは
この星に、空に
地面に、空気に
すべての人に対して
僕が 「異物」 である
という感覚
ひとり、浮いている
行くあてもなく人畜無害に
されど、曖昧な意志を持ち
たゆたう
だから寂しさを感じる
笑っていても
幸福の絶頂にいたとしても
きっと僕は、一抹の
少し控えめな寂しさを
心の隅に飼っていると思う
今もこの星にいながら
そこからひとり浮いている僕に
やわらかな安定剤などでは
どうしようもない。
本当に
どうしようもないな。
打てば響くような
やりとりを
煩わしく思うことがある
僕は昔から
よく響くひとが好きだった
意志がはっきりしていて
遠慮や水くさい気遣いをしない
純朴なひとが好きだった
それが最近になって
なぜか
「響かないひと」 に
惹かれるようになった
無口で考えていることが
曖昧にしか伝わってこない
僕や
周りの人たちよりも
ほんの少しだけ
温度が低い人たち
そんな人たちと
静かに笑顔を交わしたとき
世界の何もかもを超えて
一瞬で心中を
分かり合えたような
気持ちになる
その幸福感にどうやら
取り憑かれてしまったらしい
少しずつ少しずつ
無口になっていく自分にも
慣れ始めている
夏は
こんなにも暑いのに。