Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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悲哀

かなしみというものは、人のために抱いてこそ
意味のある感情だと思うのです。

僅かばかりの悲哀を自分への大義名分として、
悲嘆に暮れるなどという愚かしさ。

何も生み出さないだけでなく、時間の浪費、こころの浪費、
ひいてはその感傷が刃となり、他人を傷つけるに至るかなしみ。

断乎、忘れてしまうべきだ。

自業自得

目を覚ますと

見慣れた自室が
どこか薄暗い

牢獄のような場所に
感じられた

激しい胃痛や
胸焼けが襲い

なす術も無く

ただぼんやりと
横になっていたけれど

それは

単なる暴飲暴食のため
というわけでは

なかったかも知れない

たとえ血を吐くような
人生の終局にあったとしても

僕はきっと
同じようにこの

見慣れた天井を
見つめていただろうと思う

午後も遅くなり
なんとか起き出したものの

よく考えたら
いまの僕には

やらなければいけない
つまり

人様に対して
責任を負うような仕事は

一つもないのだと
改めて気付き

声を殺して
少し、笑った

暑い日が続く
真夏にはどうなるんだろう。

拒絶

たった一言 「ごめんね」 を伝えたい人がいて、
その人数は生きれば生きるほど増えていくのです。

人に嫌われることなど、苦痛ではありません。

謝ることすら許されぬほどに拒絶されること、そして同様に
人を拒絶しなければいけない心境に陥ることのほうが、

どれほどか苦痛に思います。

一瞬

過去や未来が幸福の中に無くても、
いま一瞬を生き永らえている。

それだけで幸せだとは言えないだろうか。

主人公

これといって
疲れることもないのに

「お疲れ様」 を
振りまいている自分が

少し、汚く見えた

それでも飲み下す
冷たい缶ビールの味は

僕を現実に
繋ぎ止めるには十分で

こんな一缶の酒さえ
良い気分で飲めない人が

まだ大勢いるのかと思うと

なんとも後ろめたい
複雑な思いがしたけれど

いつだって人間は

自分に都合のいいように
物語を形作っては

何食わぬ顔で
偶然のような振りをして

その物語の主役を
演じたりするもの

それでいいんじゃないか
いや、いいのだと思う

むしろ人間は

自分の幸せをよそに
誰かの幸せを祈れるほど

崇高な生物ではない、と
ぼんやり思う

あらゆる一切の
「綺麗事」 を除いて

自分が一番大事
そして親しい人も大事

他人も少しは大事

その、「親しい」 とか
「他人」 の幅や解釈が

絶えず変化しているだけ

だから、人間臭くて
人間らしい

どこか憂鬱だけれど
晴れ晴れとした気分

なんて書いたら

また、頭がおかしいのかと
思われるんだろうか

明日も雨の予報。

慕情

徒に微笑む君の影踏みて

     不意に涙と慕情沸き立つ

コーヒーショップ

宅配の荷物を
待っている隙に

食事を済ませようと
外に出た

ヘルメットを
無造作にかぶると

エンジンをかけ

その姿勢のままで
しばらく、固まっていた

行き先が
分からないのだ

先日のカレーは
美味しかっただとか

あまり食欲がないから
カレーは重いかとか

さんざん悩んで

結局、僕は
回転寿司の裏に

バイクを乗り付けて

またしても
果たしてここでいいかと

固まっていた

そんな調子で
店に入ったものだから

注文なんて
できたものではない

自販機で買った
アイスコーヒーに

縋るように口を付けて

舐めるような目で
レーンを流れる皿を

見送るばかり

「厭な客だな」 と
自分でも思い始めたし

お客さんも増えたので
早々に会計を済ませて

退散することにした

毎日、何かしら
食べながら生きているのに

いざ食べようとすると
何を食べていいかすら

分からなくなる

こんな日記を書きつつ
明日は何を食べるか

その怖ろしい不安で
心が裂けそうになる

ちょっと言い過ぎか

選べる立場の今は
それだけで幸せなこと

今は、それでいい。

恋の表情

恋というのは 「状態」 であって
結婚や何かのような 「契約」 ではないんだ。

だから美しくて愚かで、楽しくて哀しいんだ。

晴れた坂道

ゆらゆらと

静かで暖かい
太陽の下を走った

信号待ちの
若い人たちが

笑い合うたびに

木の葉がいつもより
少し気怠そうに

揺れるたびに

僕は心から
満足してしまい

その平和な坂道を
惰性で下りながら

ヘルメットの中で
少しだけ、笑った

ああ、そうなんだ
生活しているんだ、と

そんなことさえ
忘れてしまうくらいの

穏やかな
優しい陽射しだった

夏は苦手だけれど
こんな町なら悪くない、と

ぼんやり、思った。

静かな恋

静かな 恋でした
貴方が 好きでした

ときどき 振り返る
その目が 大好きで

何度も つまずいて
心配 させました

夕暮れ 狭い道
貴方と 手をつなぎ

歩ける 川沿いの
日向が 好きでした

貴方が 泣いた日に
私も 泣きました

人知れず 手放した
自分を 責めました

静かな 恋でした
貴方が 好きでした

誰よりも 好きでした。