大人になる、ということは、
孤独の中にいながら調和を忘れず、
調和の中にいても孤独を忘れないということ。
Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私
ずっと放置していた
免許の更新をするため
久々に電車で出かけた
お決まりになってしまった
眠い講習は
講師の男性の訛りを聴いて
どこの出身の方かと
考えてみたり
学生時代と
同じ作りの机と椅子と
前に座る
若い人の背中の近さに
学生時代を
思い出してみたり
肝心の講義には
集中できなかったけれど
常々思っているほど
退屈でもなかった
乗り慣れているはずの
各駅停車と快速は
初めて乗る
電車のように感じられて
それもまた
いい気分転換になった
明日からはまた
自室で過ごす日々
たまには
外の空気を吸うのも
大きな歩幅で
ゆっくり歩道を歩くのも
悪くない
車内アナウンスをする
女性の車掌さんの声に
時間は
確実に進んでいる、と
冷水を浴びたような
新鮮な何かが
僕の中を走り抜けた。
水道の
蛇口から出る水が
痛いくらいに
冷たくなってきた
布団から出て
嫌々拭いている窓の
結露も本格的になった
季節に遅れながら
少しずつ
カラダが冬になる
ここしばらく
頭痛に刺激されて
なんとも
調子がよくないけれど
そんな時に限って
テンションは
ペットボトルの
炭酸が吹き出すように
上がっていく
誰かを傷つけると
また
大切なものを失う
それが
分かっているからか
楽しい気分の中で
不自然なほど
落ち着きが無い
明日の天気予報は
晴れマーク
久々に
電車に乗ろうかな。
現状を理解することは、
達観することでも卑屈になることでもない。
目の前にある生々しい世界を
そこにあって当然のものとして受け入れることで、
それは思考の結果というよりは、
むしろ、直感の産物である。
行き詰まったとき、不安になったときには、
泣きながらでもいいから
無理矢理、笑ってみればいい。
行動すべきかどうか迷ったときには、
見当違いでもいいから、動いてみればいい。
それが、生きるということ。
前へ進んでいくということ。
数日前
この冬初めて
淡く粉雪が降った
冬の低い空
それも晴れの日の午後に
空から
ちらちらと舞う
光の粉を見て
改めて
冬が来たんだと
僕は、感じた
僕が生まれた、冬
弟が生まれた、冬
若い頃
失恋をして初めて
人前で泣いた、冬
そして
母が他界した、冬
何かと
思い出の多い冬なのに
寒い寒いと言いつつ
存在感を押し出さない
そんな
少し慎ましやかな所が
とても好きな季節
この冬も、また
人々にたくさんの
思い出を
降らせてくれるだろう
もうすぐクリスマス
一人でも多くのひとが
笑って過ごせたら
いいのにな。
目に見えない所で
何か
離人感のような
不思議な感覚が
静かに、粛々と
僕を蝕んでいく
あるいは
単に僕が
ウツにやられて
人との繋がりを
面倒に感じている
だけかもしれない
けれど
やりとりをする
仲の良い
ほんの一握りの
ひとたちでさえ
喫茶店の
ガラス越しに
見ているように
感じる
あいた穴は
塞いでいられない
次々にあく穴を
塞ごうと焦っても
到底
間に合わない
落ちていく
セカイから
引き離されていく
もっと早く
焦りばかりが
狭い部屋に広がる
僕はどこへ
向かうのだろう
深く息を吐いた。
十二月で賑わう
近所の
フードコートで
ファーストフードの
ポテトを摘む僕の横を
全力で駆け抜けた
少年がいた
彼はすぐさま
母親に引き留められ
ずいぶんと
長く叱られていた
そして
僕はその光景を
少しかなしい気持ちで
眺めていた
確かに
食事をする場所で
走り回るのは
良くないことだろう
けれども
彼を叱る母親の目には
クリスマスを前に
賑わう冬の空気を
嬉々として
全身で楽しんでいる
「彼の気持ち」 が
見えていない、と
僕は感じた
走ったって
いいじゃないか
僕のポテトの載った
トレイを引っかけても
構わないじゃないか
いまは
冬なんだから
彼が走り回れるのは
子供に与えられた
豊かな特権なのだから
僕は
子供の頃の
十二月を思い出しながら
席を立った。
苦しいときに
手を差し伸べて
労ってくれる
人など、要らない
ただ苦しい中を
泥まみれになって
それでも歩いてる
僕を見ていて欲しい
悲しいときに
気の利く言葉で
慰めてくれる
人など、要らない
悲しみにうなだれる
僕の隣に座って
そっと一緒に泣いて
くれる人が欲しい
そんな
ありふれたようで
優しさのいる姿勢を
僕の最後の日まで
僕は持っていたい
僕の大切な人たちに
どうか忘れないで
いて、ほしい。