Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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迷走の果て

失うものの
想像以上の多さに

手酷く打ちのめされて
自分が小さくなっていく

人は
与えられた生命以外に

何も所有することなど
できない

そう理解したつもりで
日々繰り返す無い物ねだりに

夜を迎えるたび
心が軋んでは折れていく

何もかもを切り捨て
何もかもを奪われ

孤軍奮闘する自分が

あまりにも惨めで
小さく、小さく見える

「いつかまた」

そんな言葉の裏にあるのは
放擲と疑心暗鬼だけ

壊れていく心を
崩れていく調和を

僕のセカイを
ここに描いて欲しい

誰か。

疾走する理由

ふと、コンビニへ

そう思い
天気が悪かったことを思い出し

見慣れたアプリの
天気予報に並ぶ

傘のマークを並べながら
思った

天気が良かろうと
悪かろうと

僕たちが一日を一日として
自分を愛したり責めたり

人を好いたり嫌ったりしながら

毎日を送っていることに
大きな意味など、無いと

「刹那主義」 という

一見、聞こえの悪そうな
性格を自称しているのは

そんな
意味のない生活に

生命の躍動のようなものを
刻み込むことができるのが

変えられない過去でもなく
まだ知れぬ未来でもなく

ただリアルに
生き延びているだけの

平凡な 「今」 だけ
であるからかもしれない

時計は回り
世界は変貌していく

その中で

「変わらないもの」 と
「変えていくもの」 の

バランスを取るためには

今、この瞬間に
どれだけ集中して

走り抜けることができるかに
かかっていると思う

雨が止むのが
予報通りの日であろうと

10分後であろうと

変わらず
「僕は僕として生きている」 と

自信を持って笑える
そんな自分でありたい。

隙間の中で

笑いと笑いの、隙間
楽しさと楽しさの、隙間

まるで空白のように宙へ浮いた
「ひとり」 の時間

以前から
漠然とした孤独や空虚は

感じていたものの

ここまではっきりと
「ひとり」の時間と、「それ以外」が

心に打ち込まれる感覚は
いつ以来だろう

もしかしたら
初めてのことかも知れない

秒針の進むスピード
変わらないデジタル時計の表示

届かないメール

一人きりのコンクリートの箱に
単調に響き渡る空調音

何から何まで
意識するほどに苛々が募る

「まどろっこしい」

そういう言葉を使えば
適切なんだろうか

良いことも悪いことも
それ単体ではやってこないから

プラスの変化があれば
マイナス要因が伴うことは

理解していても
やはり、心は痛む

微熱続きの身体も怠く
今は休むべき時だと

分かっていても休めない
神経の不調ぶりに

重ねて苛々する

こんなことでは良くない
安定剤で、整えよう。

戦場にて

自分の中の
弱くて、どうしようもないモノが

虎視眈々と僕を狙い

ほんの少し勢いづくと
「現実はこれなんだぞ」 と

言わんばかりに
目の前に茫漠と立ち塞がる

すっかり気分を
やられてしまって

逃げ惑う余裕すら
無くした僕の喉を

少し濁りかけた水と
安定剤が流れ落ちていく

天国は、地獄の始まり
地獄は天国の入り口

だから僕は

「今」 以外を見ないで
生きようと決めて

この十年以上もの間
冷淡な表情を操ってきた

いちばん弱くて脆いものが
自分の中にある、と

理解している人たちは
みんな温かくて、優しい

けれど
その優しさに甘えたとき

僕の中の怪物は
一瞬で僕を飲み尽くすだろう

まるで戦場、最前線だ

迷えば撃たれる
躊躇すれば流れ弾に当たる

進めば、命の保証はない

いつから僕は
この平和で美しい世界を

こんなに歪んだ形でしか
歩けなくなったんだろう

涙が、溢れた。

春の浮遊

家のベランダから
乗り出して眺めた中庭に

今年も綺麗な桜が
元気良く咲いていた

急に暖かくなったり
突然、雨が降ったり

春らしい気紛れな気候に
現実は斜め上を行く

誰かの心配をして
誰かのために悩んで

自分がどこにいるか
どこへ向かうべきかを

見つめることから
逃げ出している

けれど

ぬるいシャワーを
頭から被りながら

「それでも笑える」 と
強がってみた

誰かの中に
僕が生きている限り

僕は消えたりはしないと

そんな小さな祈りで
明日も笑いたい。

コントローラー

数年前

僕の部屋には
据え置きのゲーム機と

コントローラーと
座布団がふたつ

置いてあった

当時、付き合っていた人が
遊びに来てくれた週末は

狭い自室のカーペットに
二人並んで座り

色違いの
コントローラーを持って

よくゲームをした

その人が
いくつかの可能性に賭けて

「僕とは違う誰か」 を
選ぶと決めた日から

ゲーム機と
二つのコントローラーは

クローゼットの
段ボール箱に消えた

いま

僕の部屋には
次世代機の本体として

また、ゲーム機が
置いてある

深夜の部屋で
一人きりでゲームをしていて

ときどき

不意に離人感に似た
固い違和感を感じ

涙が出てしまう理由が

やっと
分かったような気がした。

罪のない嘘

最近ふと

自分の体調と
亡き母の願いについて

ぼんやりと
考えることが増えた

母が願ったのは

僕が何かを見つけ

豊かではなくとも
何とか生きていくための

「道」 を手にすること

日々衰弱する中で
母が

最後の希望としたのは

当時の僕の
別れたばかりの

恋人との未来だった

もちろん
僕の家庭の事情に

別れて親友に戻った人を
巻き込むわけにはいかない

けれど

せめて母の余命
数ヶ月ほどの間だけでも

僕が
彼女に頭を下げて

相変わらず
うまくいっているよと

そのうちに
いい知らせがあるよと

罪のない嘘を

一緒に
吐いてもらうわけには

いかなかっただろうか

過去に逸した
仮定の発案に

声を上げて
喜ぶ人は居ない

そう思っても

消化不良のままの
たくさんの選択肢が

弱気になる夜には
薄く光っては消える

前へ、もっと前へ。

合わせ鏡

自分の弱さのため
現実から逃れるために

唯一の仲間が集う
SNSを離れて

何年かが経った

一人で迷走し
その隙間を縫うように

恋愛をすることで
やりすごしてきた

たくさんの人との
人間関係を見直そうと

古い友人たちに
少しずつ

連絡を取り始めた

疎外感が
焼き付いた声で

恐る恐る
友達と話していると

自分がどれだけ

社会から
かけ離れた場所にいるか

その現実を

思い知らされるような
そんな気がして

強気で
粗末な冗談を言うのが

精一杯だった

壊れたものは
取り返せるかも知れない

仮に、そうだとして

自分が壊した関係は
どうなんだろう

幸せはいつも

通り過ぎてから
鮮やかに

「そこにあった」 と
気付くもの。

楽観へのプロセス

ここしばらく

見えない未来の展望に
少しいじけていた僕も

だんだん

自分の立場、年齢
そういったものも含めた

「立ち位置」 のような
漠然としたスタンスが

掴めてきたような気がする

悲観から
楽観へのプロセスは

傾斜が緩いほど
心に負担が少ないもので

ゆっくりと
スープを煮込むような

長い時間をかけて
じっくりと前を見ることが

今の僕にとって
いちばん難しくて

大切なことなんだと

飲みかけの
ミネラルウォーターに

呟いてみた

隣には
マルチビタミンのサプリ

心にもビタミンを

立ち上がったら前を見て
前を向いたら踏み出して

何度でも、負けないこと
生きているということ。

白昼夢

椅子に座ったまま

だらしなく
机に寄りかかって

物思いに耽りながら

時計は
午前四時へと向かう

まるで

世界の半分が夢で

残りの半分が現実のような
不思議な感覚の中

暗闇を
壁伝いに歩くように

ふわふわとした
空気を吸っては吐き

まるで異国のような
見慣れた狭い自室の中で

「ああ」 と
何か分かったかのように

やおら背筋を正す

この瞬間も僕は
昨日と同じ

あるいは一年前
十年前と同じ重さの

一秒を生きていて

いまの僕の姿は
これから訪れる僕の

記憶の一部分へと
刻一刻と変わっていく

無力感よりも
他のどんなことよりも

今という時間を
納得して過ごせない

そのもどかしさが
背筋から這い上がっては

頭の先に
鈍い痛みを残して

ありふれた毎日へと
ただ流れ出していく

悪あがきではない
本当の解決は

僕の手の中には
きっと今は無いのだろう

せめて、明日へ
生きるために。