Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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キャパシティ

人間関係は

自分のキャパシティを超えて
大きくなってはいけない

ふと、そんなことを思った

関係を広げているつもりの
自分が、逆に

世界から浸食されている

息が詰まりそうになって
あるいは

詰まってしまってから
初めて 「しまった」 と思う

僕は困り果てる

中学生くらいなら
廊下を 100mも走れば

自分の知る
ほとんど全ての人と

直接
やりとりをすることができた

けれど、大人になった今
僕の 「リアル」 は失われ

ネットワーク越しに文字で話し
携帯のボタンを押す指先に

どんなに
気持ちを込めようとも

「自分側」 と 「相手側」 の
温度差は埋まらない

だから
手の届かない範囲まで

流れてはいけないと思う

世界があると知っていることと
世界を体験することが

別物であるように。

ぼやけた真実

僕はかなりの近眼に
乱視もあるのだけれど

かなりの頻度で、意図的に
裸眼で街を歩くことがある

人混みや、駅の改札
バーの中や繁華街

この世界にあるものの中には

多少
ぼやけて見えているくらいが

ちょうどいいものも多い

反対に
はっきりと見えてしまうと

僕は興味を失う

見えることは、素晴らしいことだ
けれど、見えすぎてはいけない

その場所の、そのものの
その人の 「空気」を

感じる能力が
鈍ってしまうから。

静かな雑音

静かな雑音の中で

失ったものと
手にいれたいものを比べる

失ったものは、何もかも
全てが大切なものだった

けれど
手に入れたいものは見あたらず

もしあったとしても
大切には思えない気がする

そうやって
いろいろな人や

ものを追いかけてみると

過去が常に
現在よりも輝いて見えるものだ

という言葉も
ただの言葉遊びではなくなる

「今」 を生きられるひとは
幸せだ

僕はこうして息をしながら
何ひとつ

自分の生きた証を
残すことができずにいる

だから
「時間など止まればいい」 と思うし

こんなにも
張り詰めた静寂の中に

耳が痛くなるほどの
雑音を聞いているのだと思う

僕が本当に欲しいものは
何だろう。

寂しさという異物

「寂しい」 と思いながら
コーヒーを口に運び

溜め息をついた

僕の寂しがり屋は
今に始まったことではない

生まれてから今まで
誰といても

寂しさを拭えたことなど
なかったように思う

それは
この星に、空に

地面に、空気に
すべての人に対して

僕が 「異物」 である
という感覚

ひとり、浮いている

行くあてもなく人畜無害に
されど、曖昧な意志を持ち

たゆたう
だから寂しさを感じる

笑っていても
幸福の絶頂にいたとしても

きっと僕は、一抹の
少し控えめな寂しさを

心の隅に飼っていると思う

今もこの星にいながら
そこからひとり浮いている僕に

やわらかな安定剤などでは
どうしようもない。

本当に
どうしようもないな。

響かないひと

打てば響くような
やりとりを

煩わしく思うことがある

僕は昔から
よく響くひとが好きだった

意志がはっきりしていて
遠慮や水くさい気遣いをしない

純朴なひとが好きだった

それが最近になって
なぜか

「響かないひと」 に
惹かれるようになった

無口で考えていることが
曖昧にしか伝わってこない

僕や
周りの人たちよりも

ほんの少しだけ
温度が低い人たち

そんな人たちと
静かに笑顔を交わしたとき

世界の何もかもを超えて
一瞬で心中を

分かり合えたような
気持ちになる

その幸福感にどうやら
取り憑かれてしまったらしい

少しずつ少しずつ
無口になっていく自分にも

慣れ始めている

夏は
こんなにも暑いのに。

真っ白な世界

そわそわと
落ち着かない心を抱えて

安定剤と鎮静剤を
飲み干したら

何の不安も動揺も無く
悩みも欲求も無く

ただ息をするだけの
無機質な僕が残った

携帯が
今日の点滅を終えれば

僕はまた
「ひとり」 に戻る

話しかける
相手がいないことに

落胆しなくてもいい

話しかけても
返事が返ってこないことに

苛々しなくてもいい

魔の時間帯は
不安を取り除いた僕にとって

楽園

ゆっくりと、ゆっくりと
秒針が動き続ける

円を描いて。

フェードアウト

僕はこの時間帯が
とても苦手だ

理由は色々あるだろうけれど
とにかくブルーになる

人と関わることが
とても怖かったり

どう接していいか
分からなかったり

誰かと関わる意欲そのものが
出てきたり消えたり

何もかもを
自分のせいにしてしまいそうになる

前に進むことを
諦めてしまいそうになる

頭の中がゆっくりと
悩み事で埋め尽くされていく

夜明けまでは長い。

漆黒の螺旋

まるで
真っ黒な螺旋のようだと感じた

誰の手の中にも
僕が必要としているカードは無く

僕もまた
彼らの必要としているものを

持ち合わせてはいなかった

遅かれ早かれ
「さよなら」 は告げなければならない

桜の季節
別れに相応しい桜色のウインドウを見ながら

僕は無造作に
PCの電源を落とした。

哀しい色

見慣れた暗闇は
気のせいか

少し哀しい色に
くすんで見えた

僕はゆっくりと
天井の中心に向かって

左手を翳した

この天井さえなければ
僕の瞳には

月が映っていた
かも知れないのに

栓無いことを考えては
失速する気持ちに

自分で
拍車を掛けながら

そんな自分が嫌いだ、と
思った。

記憶の欠片

こんな時には

あの人の
あんな顔が似合うだろうか

平凡だけれど
目まぐるしい毎日の隙間に

無造作に挟まれた
栞のように

友達だった人の
恋をした人の

自分を慕ってくれた人の
仕草や口癖が

鮮やかに蘇ってくる

あの人が
今ここにいてくれたら

と思う時

その人はもう
僕の手の届かない

どこかにいる

全てを過去にしたのは
僕の咎

二度と戻れないことは
分かっていたのに。