Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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晴れた坂道

ゆらゆらと

静かで暖かい
太陽の下を走った

信号待ちの
若い人たちが

笑い合うたびに

木の葉がいつもより
少し気怠そうに

揺れるたびに

僕は心から
満足してしまい

その平和な坂道を
惰性で下りながら

ヘルメットの中で
少しだけ、笑った

ああ、そうなんだ
生活しているんだ、と

そんなことさえ
忘れてしまうくらいの

穏やかな
優しい陽射しだった

夏は苦手だけれど
こんな町なら悪くない、と

ぼんやり、思った。

ストロー

小雨の降る中
ヘッドホンを耳に押し込み

バラードを聴きながら
食事も兼ねて

バーガーショップへ
コーヒーを飲みに出かけた

僕は、店の窓から
道行く人々を眺め

そのたびに溜息を吐き

傘が無い
というわけでもないのに

帰路につくことを
酷く、億劫に思ったまま

アイスコーヒーの
ストローに縋る思いで

かじりついていた

傘を差しながら
ふざけて笑い合う

窓の外の女子生徒

店内で雑談に興じ
時折、大声を出す主婦

日々の糧を得るべく
サービスに励む店員たち

その何もかもが

自分とは遠い
どこか違う世界にいるような

錯覚を覚えて

確かなものは
口に流れ込んでくる

コーヒーの味と
その温度だけのように

感じられた

風邪はまだ治らず
鈍い頭痛は続く

今日もしっかりと
眠れたらいい

それだけで、いい。

明るい夜

ここ数日
徹夜が続いていて

まともに
眠れていないせいか

五感が麻痺して
音もニオイも歪んでいる

昨夜も

ベッドに移動して
横になってはいたものの

眠剤が
いつまでたっても効かず

エアコンのタイマーが
切れたのを引き金に

アトピーだか薬疹だか
よく分からないけれど

発疹で荒れまくっている
両腕の内側や

胸元などの皮膚を
無我夢中で掻きむしり

手を血まみれに
してしまった

眠らないということは

傷つけられた一日分の
尊厳だの虚栄だのを

リセットする機会を
失うということでもある

今日は
カラ元気はナシだ。

暗夜の放心

眠剤を飲んで
横になっていたけれど

いつもの如く
あまりの効果の無さに

横になっているのも
だんだんと苦痛になって

いよいよ

居たたまれなくなって
勢いよく起き出し

カップ麺を
手当たり次第にふたつ

ペットボトル 2本
一気に空にしたところで

生きた心地がした

話し相手を探すにも
既に深夜、3時

僕は椅子に座ったまま

何とはなしに
好きな言葉を二三、呟く

そしてまた視線を
汚いスープへと移す

こんなものを食べたのか
と、少し自己嫌悪する

けれど、頭で思うほど

不本意なことをしたとも
特に思えない

要するに、どうでもいいのだ

僕が安定していたのは
恋人と呼べる誰かが

存在した期間だけ

関わるべき誰かのことを

優先順位を明確にして
考えていられた

比較的
恵まれた季節だけ

一人に戻れば
相も変わらず

今も昔も同じことを
繰り返している

こんな塩辛いスープ
誰が飲むんだろう

こんな不健康な夜食
何年続けているんだろう

「切ない」 とか
「侘びしい」 というのは

こんな気持ちの
ことなんだろうな。

冷やし中華

このところ

平日であろうと
休日であろうと

朝食であろうと
夕食であろうと

一心不乱に

コンビニの
冷やし中華を

食べている

どうやら僕には
冷やし中華のことを

冷麺と呼ぶ癖が
あるようで

その癖を友人に
優しく質されたりしつつ

相も変わらず

飽きずに
食べ続けている

今日は土曜日
醤油と胡麻で二食

明日も同じものを
買ってきてもらう予定

寿司と麺と
ハンバーガーで

案外
体重も減らない

と思ったら

夜食を
計算に入れるのを

忘れていた

深夜なら食べられる
いくらでも食べられる

どうしてだろう。

端数、1円

小雨が降る中

朝食と夕食を
まとめて買い出しに

コンビニまで走った

こんなときは
車のほうがいい

屋根が付いている

けれど
毎回車庫入れは面倒だ

などと
考える間もなく到着

ごまだれ冷やし中華
おにぎり

焼きそばパン
ペプシドライを購入

目測で
1000円ちょうどを狙ったら

1001円になった
なんとも情けない

帰り際に
マンションのエレベータで

今日初めて
人と会話をした

とは言っても

お互いに
「ああ、すみません」

ただ、これだけだった
それでも、嬉しい

どうやら

昨夜、家を抜け出して
過食をしたらしく

吉野家で
豪勢に食べたレシートと

枕元には
チョコレートの空箱が

転がっていた

今日は
サッカーを観よう

雨の日は
このくらいが丁度いい

CRP、好酸球
検体屋さんで分析中。

空の器

空腹に弄ばれながら
コーラを流し込む午後

外は晴れているらしい

というのも、今日は
まだ窓の外を見ていない

机上の限られた面積を
じわじわと占有し始めた

空のペットボトルと
空き缶たち

空っぽになっても
そこに居てもいいと思う

僕も、いつか誰かに
そんな風に

思ってもらえるだろうか

何も持たないけれど
そばに居ていいんだ、と。

眠りと覚醒

夜の街は風も強く
人影も車もまばらで

普段見ている昼の街より
ほんの少し、優しく見えた

僕は、コンビニで
飲み物を買ったあと

店の外に出て
しばらく空を眺めていた

こんなに暗い夜なのに
眠れないんだ

そんなことを思って

また、人気のない道を
ゆっくりと家路についた

街が眠るとき
僕は覚醒している

セカイが終わる時も
きっと僕は

高揚感の中、恍惚と
覚醒しているだろうな。

苦い気持ち

雨の中をコンビニまで
濡れながら走った

夕食を選ぶだけなら

「食べない」 という
選択肢もあったのに

雨に濡れたヘルメットと
カラダを引き摺って

マンションのエレベーター
壁に寄りかかってた

もしも、このセカイに

「愛されたい」 なんて
不埒な感情さえ無ければ

僕はどんな縁だって
愛おしく思えるはず、と

ウォッカベースのチューハイの
プルタブを引いては笑う

取り戻せない
過去を追いはしないけど

いつもより苦く感じた

隙間からこぼれ落ちる
僕の気持ちのように。

寒い部屋

夜中じゅう
家の近所の国道を走り回って

睡眠剤の苦味を
自虐的に楽しんで

ただ、ぼーっと

真っ白なコンクリートの壁に
もたれたまま

FMから漏れる誰かの声に
ときどき、気を引かれて

朝になった

連日のように続く
原発や震災関連のニュースも

「今頃そんなことを」 と
思うほどの暢気さで

呆れて気分が悪いので
聞く気にもなれないし

有り金は
持病の通院にかかる分以外

全部募金してしまったから
残高はゼロだ

もう、このコンクリートの箱に
悶々としているしかない

せめて話す相手でもいれば
電話でもかけるのに

なんて

完全に孤独になってから
気づいたところで

遅すぎる

昔はたくさんの人に
愛され、慕われていたけれど

それを頑なに拒絶し
冷酷に縁を切ってきたのは

臆病者の
僕自身なのだから。