Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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鳴り続ける音

夜通しリピートで

鳴りっぱなしの音に
眠りを遮られ

目を覚ます

枕元に
クスリのシート

机にも
シートの切れ端

飲みかけの

ペットボトルの水の
透明さが

薄明かりに哀しくて
どうにもやるせなくて

暗い部屋の中で

右に寝返りを打ったり
左を向いたり

枕元のゲームを
やおら手に取ってみて

すぐに飽きてみたり
とにかく行き場が無い

大きな欠伸、ひとつ

カーテンを少し開けて
外の様子を窺う

いつもと同じ景色は
雨に染まっている

ああ

意味も無く
ひとしきり落胆して

シャカシャカと
鳴り続けている

音に興味を惹かれ

ヘッドホンを
耳に押し込んだ

このまま、このまま

きっと僕は
まだ生きていける。

遭難未遂

昨年の大晦日から

東京へ移動して
弟一家と合流し

家族全員で
コテージに泊まった

栃木の山奥は
真っ白に雪が積もり

狭い林道には
街灯もなにも無く

冗談混じりに

遭難しそうだ
などと言っていたけれど

着いてしまうと

意外と温かい小屋に
おせち料理を広げ

思いの外
快適に過ごせた

そして今日
午後の新幹線で帰宅

疲れたけれど
行って良かった

ただひとつ

何故かどうしても
大勢でいると

普段の自分と

その場で笑う自分が
別人のように思えて

ひどく孤独を感じ

お決まりの
無い物ねだりで

家族連れを
羨んでしまい

年始早々
気持ちを持て余して

そちらのほうが
疲れてしまった

新しい年

また
気分を入れ替えて

心を、磨こう。

今日の祈り

深夜

カタカタと
キーボードの音が

寒い空気を
震わせている

明日から
遠出だというのに

眠れず

起き出しては
PCの電源を上げ

書くことと言えば
小学生の作文のよう

「お知らせ」 の
ジャンルを撤廃した

けれど

どこかで
お世話になった皆様に

お礼を伝えなければ
気が収まらない

今年も一年間
多くの出会いと

衝突や別れもありました

僕はただ
そのときどきで

皆様が僕に対して

真摯に
向き合って下さったことに

感謝し、誇りに思います

以前、詠んだ歌に

「去る人を旅立つ人と読み換えて
 ただひたすらに幸を祈らん」

というものがあります

僕の元を去った方も
そして

僕が己の弱さゆえに
切り捨ててきた方々も

何卒
最高の笑顔をもって

新しい年を
迎えられることを

貧しい資質と
病んだ精神の隙間から

一心に
お祈り致します

本年は

愛情を、憎しみを
たくさんの喜怒哀楽を

本当に
有り難うございました。


武藤 希 (Nozomi Muto)
 

ただいま

食事から帰り

誰もいない
真っ暗な玄関で

「ただいま」 と
小さく呟く

もう三年近くも
父と二人で

生活してきたのに

こればかりは
いまでも苦手で

仕事をしていた頃

自分が
一人で暮らしていた

ということが

まるで夢のような
出来事に思える

孤独を知り

それを
上手に使えるのが

大人だとすれば

僕はまだ
成長が足りない

次々に
部屋の灯りをつけ

にわかに
生活感を帯びた家で

一人、そう思った。

学生になる日

ずっと放置していた
免許の更新をするため

久々に電車で出かけた

お決まりになってしまった
眠い講習は

講師の男性の訛りを聴いて
どこの出身の方かと

考えてみたり

学生時代と
同じ作りの机と椅子と

前に座る
若い人の背中の近さに

学生時代を
思い出してみたり

肝心の講義には
集中できなかったけれど

常々思っているほど
退屈でもなかった

乗り慣れているはずの
各駅停車と快速は

初めて乗る
電車のように感じられて

それもまた
いい気分転換になった

明日からはまた
自室で過ごす日々

たまには
外の空気を吸うのも

大きな歩幅で
ゆっくり歩道を歩くのも

悪くない

車内アナウンスをする
女性の車掌さんの声に

時間は
確実に進んでいる、と

冷水を浴びたような
新鮮な何かが

僕の中を走り抜けた。

ペットボトル

水道の
蛇口から出る水が

痛いくらいに
冷たくなってきた

布団から出て

嫌々拭いている窓の
結露も本格的になった

季節に遅れながら

少しずつ
カラダが冬になる

ここしばらく
頭痛に刺激されて

なんとも
調子がよくないけれど

そんな時に限って
テンションは

ペットボトルの
炭酸が吹き出すように

上がっていく

誰かを傷つけると
また

大切なものを失う

それが
分かっているからか

楽しい気分の中で
不自然なほど

落ち着きが無い

明日の天気予報は
晴れマーク

久々に
電車に乗ろうかな。

光の粉

数日前

この冬初めて
淡く粉雪が降った

冬の低い空
それも晴れの日の午後に

空から
ちらちらと舞う

光の粉を見て

改めて
冬が来たんだと

僕は、感じた

僕が生まれた、冬
弟が生まれた、冬

若い頃

失恋をして初めて
人前で泣いた、冬

そして
母が他界した、冬

何かと
思い出の多い冬なのに

寒い寒いと言いつつ
存在感を押し出さない

そんな
少し慎ましやかな所が

とても好きな季節

この冬も、また
人々にたくさんの

思い出を
降らせてくれるだろう

もうすぐクリスマス

一人でも多くのひとが
笑って過ごせたら

いいのにな。

respect

今日は診察日

午後に
サッカーがあるので

早起きをして

午前診に入り
帰ってゆっくり観戦

と、思ったけれど

やはり起きられず
午後始動

病院へ行き
急いで帰ると

ちょうど

後半戦が
始まるところだった

AWAY ということも
あったけれど

厳しい当たりに
選手も苦戦していた

国際試合
ということは

自分の国の文化とは
まったく異なる

違う考え方や
違う発想の人たちと

同じ空気の中で
向き合うということ

普段のサッカーは

代表選手の
テクニックや

チームワークなど

目立つところばかりに
驚いているけれど

異国でも
平常心を持って戦う

その
メンタリティーに

今日は敬服した

何よりも
代表選手たちが

一言も
悪口を言わずに

堂々と
負けて終わった

そのことが
いちばん嬉しかった

走り回った半日

今週の
山は越えたかな。

年末の気配

重い朝

枕元には
今日の明け方

コンビにで買った
スニッカーズと

読みかけの
メールを映す液晶

それ以外

何ひとつ
変わらない部屋で

今日が始まり
暮れようとしている

僕は

食べようとした
スニッカーズを置き

テーブルの
コンビニ弁当を

レンジで回した

父や弟からは
年末の連休の話題

そんな時期か

今年、僕は
何をできたんだろう

そればかりを
ぼんやり考えて

時差ぼけの朝食が
終わった

今日も寒いな。

オレンジ色の部屋

昨夜は
凍えるような寒さの中

深夜未明に
ハンバーガーを食べて

いまひとつ
スッキリ眠れないまま

目を覚ました

モニタに向かい
何をしたわけでもなく

ほんの少し

ただ、ほんの少し
ぼーっとしていると

西の窓が
オレンジ色に染まる

16時過ぎ

こんな時間に
夕暮れが始まると

僕の活動する
いわゆる 「昼間」 が

無くなってしまうような
気分になるけれど

人間は
日照時間が短い方が

どこか一日を
豊かに過ごしているように

思えて仕方がない

何かに追われながら
生きられなくなった

何かに追われるような
生き方を捨てた

だから、ただ
そう思うのかも

知れないけれど。