Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


[ すべて表示する ]   [ 作品集サイトへ ]   [ フィード購読 (RSS) ]     
login

記事一覧

彷徨の中

大切なひとを
数えたら、たくさんいる

どうでもいい人を
数えてみたら

自分が思っているより
ずっと少なかった

そして
その少ない中でも

一番どうでもいいのは
僕自身だった

愛されたら
愛されればいい

憎まれたら
憎まれ罵倒されればいい

笑う人には笑われ
異物扱いする人たちの前では

異物のふりをして
おどけていればいい

そうやって回るセカイ
そうやって回る毎日

もう

どこへ行けば
僕が僕のままでいいと

言ってもらえるのか

分からなく
なってしまった。

オレンジ色の指先

昼寝から
目を覚ますと

西日の射す部屋が
オレンジに染まっていた

また、一日が終わる

こうして自分が
緩やかに死んでいくという

その事実について

僕はむしろ
楽観視すらしている

凡人のままでいい

ほどほど愛されて
それなりに嫌われて

当たり前のように
死んでいくのがいい

オレンジを見ていると

出会いも別れも
僕にとっては

ただの通過点に過ぎないと
強く、思う

植物のように
ゆっくりと、ゆっくりと

一日を終えたい。

憂いと崩壊

ゆっくりと育つものも
世界にはたくさんある

けれど

ゆっくりと育ったものは
往々にして

一瞬で崩れ去る

胃が痛くなるくらいに
何かを憂うとき

そのことについて
先立つ思いを抑えるのは

最早、不可能で

僕はひたすら
理解を求めるためという

下らない名目のもと

大切なものを
壊しては失してゆく。

見失う「僕」

「僕らしい」
という言葉の中には

どれだけの錯覚と
どれだけの空虚な理想が

含まれているのだろう

僕の安らぎと
アイデンティティーは

ここにこそ在る、と
信じていたのに

それが次々に崩れ
行き場を無くしてしまう

健康も、知識も

大切だった人たちが
傍にいることも

何もかもが
僕が僕でいるためには

必要なことなのに
叶わない

抜け落ちた 「僕」 を
捜しているうちに

朝になってしまった。

備えと憂い

目の前に

補給したサプリや
化粧品の山を並べて

ここ暫くのソワソワが
落ち着いたと思ったら

一気に気が抜けた

食糧でもあるまいし
三日や一週間なかったとして

どれほどの被害も
ないものばかりなのに

「無くなった」 という
ただそれだけで

パニックを起こしてしまう

そして予備をたくさん
買いすぎてしまい

金欠に陥る

ああ、始まった
またいつものパターンだ。

未明、最前線

体中が
ガタガタ震える

寂しさでもない
虚しさでもない

得体の知れない威圧感が

僕の脳から爪先までを
串刺しにする

部屋の明かりを消して
布団を頭から被って

ガタガタ揺れる腕を
必死に押さえ付けても

不安と恐怖は消えない

クスリは切らしている
傍には誰もいない

無音で
叫びそうになる

あと数時間
夜よ、去れ。

ハードカプセル

サプリの袋が
次から次へと空になる

こんなもの

段ボール詰めにでも
してもらわないと

僕には、間に合わない

結局のところ
あっても無くてもいいもの

僕が美しくなろうと
小汚く生きていようと

社会も国も、地球さえも
同じように回るのだから

そう
どちらでもいいもの

そして誰にも
誉められることのないもの。

耳を澄ます夜

台風情報を横目に
椅子から立ち上がる

外は暴風雨

大蛇が暴れているような
怖ろしげな音がしている

生活音以外で、窓越しに
こんな大きな音を聞くことは

そう滅多にない

抗生物質とビタミン剤に
サプリを一通り飲んで

布団に入ろうか思案する

携帯をいじくりながら
そのまま寝てしまうのも

すっかり常習犯

この分だと明日も
家に缶詰めだな。

悲愴な沈黙

エアコンも出番が減って
すっかり静かな夜

やることの無い僕と
僕を乗せて回る地球

何て悲愴な時間だろう

存在感を示しているのは
掛け時計の秒針の音と

時折、ゆっくり吐き出す
僕の溜め息だけ

もうすぐ夜が明ける

また徹夜に
なってしまったな。

透明なゴール

疲れた

そう思うことにも
疲れてきた

恐らく今あたりが
ウツの底なのだろう

人間が煩わしい

そう思う自分自身も
また煩わしい

生活も、煩わしい

そんな中で
痩せたい、綺麗になりたいと

一生懸命にサプリを飲み
スキンケアをして

律儀に服を全部脱いで
体重計に乗る僕は

どこか、壊れていると思う

物事の優先度とか
いわゆる生活とかいうものが

どこか、歪んでいる

それでも僕は
錠剤の数を律儀に数えて

クスリやサプリを飲む

綺麗になって
誰に見せるんだろう

誰が褒めてくれるんだろう

僕のリアルには
父と主治医しか居ないのに

苦いな。