Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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拝啓、アルジャーノン

暗闇の中
天井に目を凝らす

明日になれば

呼び慣れたはずの名前を
また一つ、忘れてしまいそうで

息が
少しだけ苦しくなる

人は、忘れることで
生きていけると言うけれど

それは

一言の偽りもなく
誰かを愛した歴史そのものを

自分の記憶から
時には、相手の記憶からも

綺麗さっぱり
消し去ってしまう

非情な時限装置

生きた価値自体を
台無しにしてしまうことが

僕には
分かっていたはずなのに

どうして、何人ものひとを

心が溶けてしまうほどに
愛してきたのだろう

記憶は奪われる

心のそこここに散在する
「二人の時間」 の断片は

哀願する僕を尻目に
日々、ゆっくりと薄れてゆく

愛するんじゃなかった
別れるんじゃなかった

何もかもを覚えていたいと
すべてを刻みたいと

願ったりしなければ良かった

抗えば抗うだけ
消えかけの記憶が嘲笑う

アルジャーノン

キミもこんな気持ちで
日々を過ごしたのか

生きているという事実ほど
残酷なものは無いな。

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