Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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はなむけの言葉

部屋を隅々まで
埃を払いながら掃除したら

中学生の頃

転校することになった僕に
クラス全員からもらった

色紙が何枚か出てきた

人に流されないで
いつまでも優しくいて下さい

生徒会長ごくろうさま

などと、丁寧に
励ましてくれる女子たち

一番に話しかけてくれた
君を失うのは寂しい

向こうの学校でも
女ったらしで頑張れよ

などと、冗談交じりに
元気づけてくれた男子たち

片付けの手を止めたまま

読み切れないほどに
書き綴られたメッセージを

僕は一つずつ
丁寧に読み返して

自分とはいったい
どんな人間なのか

これだけの好意と
激励を贈られた人物が

本当に僕であったのか

そんな半透明の疑問が
一瞬、頭をよぎり

目を閉じたまま

例えようのない感情に
涙が止まらなかった

転校する季節
最後に付き合っていた人は

いつまでも思いやりのある
人でいてください

そう書いてくれていた

彼女が僕に
告白してくれたきっかけは

教室で育てていた花に
僕がこっそり水をやっていたとか

そんなことだったと思う

思いやりのある 「僕」 を
好きになった少女は

二十年後
荒んだ生活を送る僕に

目から鱗が落ちるような
思いやりを与えてくれた

彼女がどうして
「僕」 を好きになってくれたのか

こんな優しさを

受け取る資格のある自分が
どんな自分だったのか

少しだけ
思い出せた気がした

いつでも、今が出発点

空回りしてばかりの心に
道標を、ありがとう。

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