母の遺影と遺骨の前で
線香に火を灯して
僕は食パン、母にはバナナ
二人で朝食を食べながら
いろいろなことを話した
産んでくれてありがとう
お母さんの子供で良かった
これからは
今まで頑張ってきたぶん
しっかり休んでね
人間が一人減ったけれど
家族が減るわけじゃないから
またちょくちょく、話そうね
僕は仏教徒ではないけど
お母さんが大切にしていた神様に
お祈りをしたいから
法要なんかは手を合わせるよ
と、話しているうちに
パチパチと小さい音を立てて
線香が燃え尽きてしまった
母のお下がりのバナナを
あぐらをかいて頬張りながら
父と弟が役所巡りをしている今
母が入院していた頃と同じ
ひとりきりの家なのに
やけに寂しく思えてならない
あと何十年かしたら
僕もそっちにいくからね、と
仏壇をあとにした。