部屋を片付けているうちに
今日が、昨日へと変わった
普段はクローゼットの奥で
眠っているたくさんの箱を
開けるたびに、時が戻る
恋人と遊びに行った場所で
受け取ったレシートの山は
コンビニの飲み物まで
記念に束にしてあった
その前の恋人は
一緒にゲームをするために
二人で選んだコントローラー
その前の人は、年賀状と
宅急便の伝票の束
部屋を訪ねた帰り
折からの雨に降られて
借りたまま
僕専用になっていた傘
反対に
僕の部屋に忘れていった
別の恋人の傘も出てきて
何から何まで
大切に残してある笑顔の証に
すっかり囲まれてしまって
とても片付けるどころではない
別れたたくさんのひとは
元気にしているだろうか
僕と居た頃よりも
幸せに過ごしているだろうか
そんなことを思って
胸が、少し苦しくなり
涙が滲んでへたり込む
本当に好きだったんだ
こんなにも愛されたんだ
幸せの轍は
うれし涙に変わって
時を浪費するだけの僕を
優しく戒める
今日も、笑おう
未来の自分へ
大切な笑顔の記憶を
届けるために。