僕が
生身の人間と話すのは
食事の
お会計をする時だけだ
そう書いたら
随分と寂しく
侘びしい生活のように
聞こえるかも知れない
けれど
実際、そうでもない
子供の頃から
勤め人を降りるまで
僕は人間というものが
大好きだった
それぞれの人に
変わった個性があり
そのどれもが
好意的に感じられた
しかし
状況は、変わったのだ
今の僕は、たとえ
ネット越しであろうと
人と話すこと
関わること恋すること
何もかもが、怖い
中途半端に手を出しては
尻尾を巻いて逃げ出す
その繰り返しで
随分、人脈も失った
僕が
「もう笑わない」 と
書いたのは
誇張でも何でもない
ごく当然の成り行きで
ヘラヘラと
愛想笑いを振りまく僕に
本当の笑顔など
もう残ってはいないのだ
生きることに
疲れた中年の姿
人からは
どう見えているだろうか
僕と親しくなる人は
笑わない僕を知るだろう
そして
僕を笑わせることは
二度とできないのだと
あきらめて
心を痛めることだろう
だから誰も求めない
だから誰も寄せ付けない
カチカチと
音を立て始めた時限爆弾に
見せかけの善意や
偽善や独善的な愛情で
しがみつくもんじゃない
気がついたときには
僕と一緒に粉々だ。