上の階から
ピアノの練習をする
音が聞こえる
決して上手ではない
曲にすらなっていない
けれど
納得のいく
演奏ができるまで
あるいは
ミスを修正できるまで
何度も同じフレーズを
弾き直し
疲れてくるのか
ときどき
違うずっと簡単な曲が
少しだけ挟まっている
僕も幼い頃
練習をサボっては
先生の前で譜面も見ずに
好き放題に弾いては
笑いながら叱られた
カンペキに
弾きこなしてしまうより
こんな辿々しい試行錯誤で
鍵盤を叩くほうが
ずっと人間らしくて
芸術性が隠れていると
思いながら
その音色に
しばらく耳を傾けた。