コンビニからの帰り道
車道を 60km/hで走る
バイクのミラーに
小さなバッタが
必死でしがみついていた
とてつもない速度で走る
大きな大きな乗り物に乗り
相当な距離を
移動したということは
彼の一生のうちで
指折り数えるほどの
大冒険になるだろう、と
僕は内心思いながら
信号待ちの隙に
彼を歩道へ向けて放した
僕は
飛行機が怖いけれど
もしも乗ったなら
彼と同じくらいの
大冒険をした気分が
味わえるだろうか
人間は知恵があるから
高等だなどと自称するけれど
彼のほうが
何倍も勇敢で立派だと
ドアの鍵を回しながら
思った。