Wish You A Happy Life
降り積もる 雪に未来を 踏む私


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雨上がりの匂い

連休が明けて

病院の待合室は
少し、混雑していた

子連れの女性が

ぐずって泣く子供を
「うるさい」 と叱りつけ

僕は

そんなに叱ったら
かわいそうだよ、と思い

それでも

口には出さずに

ニュースサイトを
ひたすら斜め読みして

順番を待った

いつものクスリに
抗生物質をねだり

忘れている主治医に
採血もお願いし

カルテを記入しながら

「何ミリ?」 と聞く
主治医の声に

「800ですね」 と
愛想良く答えると

クスリを受け取って
暗い空を睨み

行き先も決めずに
エンジンをかけた

行き着いた先は
近所の焼肉屋さん

案内された席から
ガラス越しに

夕立に走る
たくさんの人が見えて

ひとり、食べ終えて
店を出る頃には

雨は、止んでいた

一面に漂う
雨上がりの匂いは

食事の味よりも
デザートの味よりも

今日いちばんの
僕のラッキーになった

八月も、あと少し。

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