目を覚まして
点滅する携帯から
天井に視線を移すと
カーテン越しの夏の光に
光と影が混ざって
静かなグラデーションを
映し出していた
時計の針が
視力の無い目に
一本、滲んで見える
ああ、12時か
そう呟いて徐に
布団を脚で壁際に寄せ
横になったまま
大きく背中を反らせて
伸びをする
少年の声、車の音
色とりどりの生活音
一人きりの部屋
まるで
時間を気にすることなく
恋人と戯れて
怠惰に遊び眠ったあとの
午後のようだった
力が抜けたような
深く長い溜息を吐いて
ふと、横を向いて見ると
やはり誰も居ない
僕はそのまま
また、天井を見上げる
誰かと目覚めた朝は
よくこうやって
額に手の甲をあてたまま
ポツリ、ポツリと
他愛のない会話を
二言、三言交わして
「今日どうするの?」
などと聞かれても
「どうしよう」 と
無責任な返事をして
束の間の平和を
引き伸ばしては貪った
まさか、一人きりで
この空気を味わうとは
一日の始まりから
調子が狂ってしまう
アンニュイ
これは救われないな。