ワイングラス


カーテンを 閉めて
流れ出す 二人の時間
無口に ワインの香りを嗅ぐ
貴方が 愛しかった

雨音に 追われ
溢れ出す 一人の時間
貴方のいた場所と 空っぽの
胸が 今もざわめく

誰より 孤独なくせに
突然 訪ねて来るくせに

穏やかに 温かく笑ってた
あの強さは 私への優しさだね

貴方の弱さも 脆さも
臆病さも 汚さも 泣き顔も
一つ残らず 私は愛してた
ただ貴方が 愛しかった

カーテンを 閉めて
雨音に あの頃のように
無口に 香りを嗅ぐグラスに
私の 後悔が落ちた

嗚咽の中 何度も
繰り返す 貴方の名前と
声にならない 「ごめんね」 が
響き渡る 小さな部屋

貴方に 多くを求めた
幼い恋を ひとり責める
私は貴方が いればよかった
ただ貴方が 愛しかった

貴方だけが 愛しかった